The story
京都の北西、歴史の息吹が色濃く残るこの場所に、今、あなたは立っています。大きな石造りの鳥居を見上げてください。ここが、全国に一万数千社ある天満宮、天神様の総本社、北野天満宮です。
一歩足を踏み入れると、街の喧騒がすっと遠のき、厳かな空気が体を包み込むのを感じるはずです。 参道を歩き始めると、左右にたくさんの牛の像があることに気づくでしょう。「なで牛」と呼ばれるこの牛たちは、北野天満宮の神様、菅原道真公の使いとされています。
自分の体の悪い部分と同じところを撫でると病が治ると言われ、特に頭を撫でると知恵を授かると信じられています。長年、多くの参拝者に撫でられ、滑らかに光り輝く牛の背中に、ぜひあなたも触れてみてください。 さて、ここで祀られている菅原道真公とは、一体どのような人物だったのでしょうか。
平安時代、類まれなる才能で右大臣まで上り詰めながらも、政争に巻き込まれ、遠く九州の大宰府へと左遷された悲劇の秀才です。しかし、その死後、彼は天神様として信仰を集めるようになりました。今では「学問の神様」として、受験シーズンには合格を祈願する学生たちの切実な願いで溢れかえります。
道真公といえば、梅の花を抜きにしては語れません。大宰府へ発つ際、庭の梅に別れを惜しんで詠んだ歌があります。「東風吹かば にほひをこせよ 梅の花 主なしとて 春を忘るな」。
主を慕ったその梅は、一晩にして京都から九州まで飛んでいったという「飛梅伝説」が残っています。境内の約1500本もの梅が咲き誇る早春には、あたり一面が甘く清らかな香りに包まれます。 参道の突き当たりに立つ楼門をくぐり、国宝の本殿へと目を向けてください。
桃山文化の粋を集めた豪華絢爛な建築様式は、豊臣秀吉の遺志を継いだ秀頼によって造営されました。色鮮やかな装飾や緻密な彫刻は、見る者を圧倒する力強さを持っています。 もし今日が25日なら、あなたはとても幸運です。
「天神さん」の愛称で親しまれる縁日が開かれ、参道には骨董品や食べ物の屋台が所狭しと並びます。地元の人々と観光客が入り混じる活気こそが、この場所が千年以上もの間、京都の暮らしに根付いてきた証です。 静かに手を合わせ、願いを込めた後は、ぜひ裏手の静かな小道を歩いてみてください。
歴史の重みと、四季折々の自然の優しさが、あなたの心をそっと解きほぐしてくれるはずです。知恵の神様に見守られながら、この美しい杜でのひとときを、どうぞ心ゆくまでお楽しみください。